2008-02-29

仁義の墓場

深作欣二の最高傑作。
であると、わたしは思っています。
実在した戦中派ヤクザ。
石川力夫の生涯を描いた作品ですが、
深作欣二の演出力に脱帽です。
自由自在に動くカメラ、
そして絶妙なカッティング(編集)。
本当に面白くて、
スタイリッシュな暴力映画です。
以前。
この映画を知らない女性の方々にお観せして、
その様子を観察してみた事があるのですが。
皆さん、
グイグイと石川力夫にのめり込んでゆきます。
革新的な撮影技法と編集技法を多用しながらも、
万人が虜になる映画です。
深作欣二は国際映画祭とか無縁な方でしたが、
国際的にもっと評価されるべきお方だと思います。
1975年の完成直後。
この映画を国際映画祭に出品していたら、
かなり評判になっていた事でしょうね。
そんな発想、
当時の東映にはなかったでしょうけど。
イワモケ

[追筆]
石川力夫の墓は、
新宿の常円寺に現存するそうです。

2008-02-28

アクセス不能

本日。
午前7時頃から、
ブログにアクセス出来なくなりました。
原因はどうやら、
昨日の「ソドムの市」画像(猥褻?)だったようです。
わたしのブログを、
悪徳ブログと自動認識したのでしょうか。

冤罪だと報告したら、アクセス可能になりました。
画像における肌色のパーセンテージで、
自動認識しているのでしょうか。
そんなに肌は露出していませんし、
乳首も陰毛も微妙なラインです。
まったくもって、不可解です。
それともアルバイト君が、
膨大なブログをいちいち監視しているのでしょうか?
芸術か?猥褻か?
永遠のテーマです。
うーん。

イワモケ

2008-02-27

ソドムの市

この映画を撮り終えた直後。
ピエル・パオロ・パゾリーニはローマ郊外のオスティア海岸で、
轢死体(車にひかれて死ぬ)で発見されました。
当時の新聞には。
この映画に出演していたエキストラ少年に、
パゾリーニが男色行為を強要して殺されたと、
書かれていたように記憶しておりましたが。
犯人として逮捕された男性(当時・少年)が2005年になって、
真犯人は別の3人組で。
家族に危害を加えると脅されたので罪をかぶった、
もう両親も死んだので話せる。
などと、告白をしているそうです。
最後の最後まで、
スキャンダラスと言いましょうか。
謎の多い監督です。
この映画がパゾリーニの遺作となったワケですが、
仕上げ前に殺されてしまいましたので。
編集およびダビングには立ち会わずして、
完成した無念の映画です。
原作は、マルキ・ド・サドの「ソドム百二十日あるいは淫蕩学校」です。
1975年当時、
わたしは14歳でした。
さすがに中学生でコレを観るワケもなく、
高校生の時に名画座で観ました。
全編、
全裸のオンパレード。
オシッコは飲むは、
ウンコは食べるはで。
画面はボカシだらけでしたからもう、
なにがなんだかさっぱりです。
今回無修正版DVDを手に入れて、観直しましたが。
よくもまあ。
ここまでの変態大運動会映画を作れたものだと、感心致します。
この映画の超強烈な印象により、
パゾリーニを際物映画を作る人と誤解されている方も多いと思いますが。
「デカメロン」「カンタベリー物語」「アラビアンナイト」と続く、
いわゆる「生の三部作」。
特に「デカメロン」は絶品であります。
是非1度、お試しくださいませ。
写真は、「デカメロン」出演時のパゾリーニ自身であります。

イワモケ

2008-02-25

Keiko

もう2度と、
観るチャンスはないと思われますが。
カナダ人(ケベック州・フランス語圏)監督、
クロード・ガニオンさんが作った日本人映画です。

わたし。
以前はこのビデオを所有していたのですが、
観過ぎてテープがぶち切れました。
本編画像はどこにも存在しませんので、
残念ながら画像なしです。

舞台は京都、
零細アパレルに勤める23歳のケイコさん。
社内の同僚に告られて、デートとかしてみますが。
なんだか違和感があり、お付き合いをお断りします。
かと言って、他に付き合う男性はいません。
銭湯帰りに、
KENという喫茶店でひとりカレーライスを食べる。
そんな、虚しくて悶々とした毎夜です。
ある夜。
KENで見かけたハンサムなカメラマンに一目惚れしたケイコさん。
また遭いたい、
その一心でKENに通い続けたある日の夜。
銭湯帰りのケイコさん、
KENに入って行くハンサム・カメラマンを目撃。
あわてて自宅アパートに戻り、
髪をセットして、
お化粧もバッチリキメていざ出陣です。
普段通りの様子でKENに入って、
カレーライスを注文します。
ハンサム・カメラマンに、
ラブビーム光線を送り続けるケイコさん。
ハンサム・カメラマンもラブビーム光線に気づき、
一戦交えます。
しかしこのハンサム・カメラマン、
既婚者でした。
その後もずるずると、肉体関係だけが続きます。
デートもせず、
ケイコさんのアパートで。
事を済ませたら色々と理由をつけて帰るという、
とんでもない野郎です。
さすがのケイコさんも疲れ果てて、
結局お別れします。
その後ケイコさんは、
同僚のレズビアンに身体をまさぐられ。
そちら方面に目覚めて、彼女と同居します。
まさぐられた相手の彼女、
趣味は写生です。
彼女から一緒に写生をしようと誘われて、
休日は朝から写生に出かけるふたりでした。
そんなこんなの毎日、
いつまでもふらふらしていないで結婚しろと。
親に強く薦められた、お見合い。
結局ケイコさん、
お見合い相手と結婚して名古屋に嫁ぎます。

という。
なんだか、いたって普通な話を淡々と。
そして実に丁寧に、撮っています。
日本人より日本人的な日本人映画です。
ここまでリアルでおかしな日本人映画は、
他には存在しないでしょう。

ああ、また観たい。
昔は12チャンネルの深夜とかで、
やってくれたんですけど。
観たい、実に観たい。
おそらくわたし、
これを誰よりも多く観ていると思うのですが。
それでもまだ観たいです。
ああ、観たい。

イワモケ

[追筆]
クロード・ガニオンさんの新作「KAMATAKI」が、
3年遅れで先週から公開されています。
これも日本人映画ですから、
おそらくまた不思議な映画なのでしょう。
観に行ってみます。

昔々。
わたしモントリオールで監督と日本人奥様ユリさんとに、
お会いした事があるのです。
だから「さん」付けです。

2008-02-22

サムライ

ジャン=ピエール・メルヴィルによる、
大傑作フィルム・ノワールです。
主演のアラン・ドロンが、
とんでもなく格好良いんです。
アラン・ドロン演じる殺し屋ジェフのアパートメント。
このセットデザインが、
また超格好良くてたまりません。
とにかく、
ぜーんぶ超格好良い犯罪映画です。
イワモケ

[追筆]
1967年製でございます。

2008-02-21

志賀直哉

知人の方々に「面白いよ」と紹介しても、
「面白くなかった」と反論されます。

志賀直哉は「暗夜行路」から読むと、
とても退屈な作家だと思います。
晩年の「万暦赤絵」あたりから、
さかのぼって読んでゆくと好きになる、
はずなのですが。
この方は文化勲章を受章なさり、
教科書に載っている立派な先生。
ではなく、
かなり気分屋の偏屈人間です。

太宰治が大っ嫌いで。
その露骨なまでの太宰攻撃は、
まったく大人げないです。
そこが、
志賀直哉の魅力だったりするのですが。

イワモケ

2008-02-20

テアトル新宿

「行楽猿(こうらくざる)」という、
奇妙な映画を公開させて頂いた劇場ですが。

そこで行った前夜祭。
「猿まつり」と銘打って、
入場料を頂いて開いたイベントです。

その夜。
スペシャルゲストとして、
自分の両親を招きました。
なぜそのような愚行に及んだのか、
思い出そうとしても思い出せないのですが。
自分で配給もやっていたので、
追いつめられていたのでしょうね。
父親が爆裂系なので、
妙にウケましたけど。

母親の方は健在ですが。
父親は3年前の5月に、
この世を去りました。
脳卒中を繰り返すこと3回、
最後は完全に寝たきり状態でした。

通夜、葬式と。
無事に進み、
棺のフタを閉めようとした時です。
父親の妹、
わたしから言うと叔母ですが。
彼女は号泣しながら、
「お願いだから目を閉じてッ!」と。
少し開いたままだった左目に、
セロテープを貼って強引に閉じさせたのです。
それを見ていた親類一同(女たちのみ)も、
「もう未練はないよッ!」
「もうイイんだよッ!」などと、
叫びながら号泣する始末です。
そんな、
騒然とした中で棺のフタは閉められました。

映画宣伝等で。
「テアトル新宿」という名前を聞く度に、
セロテープ事件を思い出します。

イワモケ

2008-02-19

千羽鶴

1969年に公開された、増村保造映画です。
原作はノーベル賞作家、川端康成の同名小説であります。
この映画の完成当時。
原作者は未だ御存命でしたから、
完成した映画を観られたのでしょうか。
観られなかったのでしょうか。
観られていたのなら、
さぞお怒りになった事でしょう。
溝口健二の「おバカ映画」を、
更なる独自解釈で進化させたのが増村保造です。
「スチュワーデス物語」などに代表される、
増村保造の大映テレビ仕事。
映画とテレビ、
基本的には同一線上にあると思われます。
誇張された演技と台詞まわし。
増村保造節、
とでもいいましょうか。
本当に独特な演出方法です。
亡き父の元愛人である二人の女と、その娘。
どろどろ愛憎劇、真剣勝負物語であります。
しかしこれが大爆笑。
とにかく登場する人、
全員くるくるぱあなんです。
川端康成が完成品を観ずに亡くなられた事を、
ただただ祈るばかりです。

イワモケ

[追筆]
この作品が増村保造映画の中で、
唯一に近くDVD化されていないのは、
原作者ご遺族様、
もしくは関係者様の反対によるものなのでしょうか?

2008-02-18

プレイタイム

撮影約2年、完成まで約10年。
ジャック・タチの70ミリ超大作映画です。
2500平方メートルの巨大オープンセットが、
パリ郊外に作られたそうで。
なにを考えているんでしょうか、
道楽映画の極みであります。
写真は、奥に見えるビルを移動させているスタッフの図であります。
残念ながらわたしは、この映画をフィルムで観た事がありません。
おそらく70ミリ版を劇場で観たら、
まったく印象の違う映画なんでしょうね。
映画の内容は、相変わらずのすっとこどっこい映画であります。
しかし、
そのスケールと繊細さには驚嘆いたします。
通常のジャック・タチ映画とは違い、
エキストラたちが大活躍する不思議な映画です。
登場する全てのエキストラたちは、
ジャック・タチによって完全にコントロールされています。
エキストラたちは3層4層になっていて、
それぞれ特徴のある動きを続けます。
見るべき人物が多すぎて、
観終わるとぐったりします。
道楽映画もここまで極めると、芸術です。

イワモケ

2008-02-15

「菊池」の脚本デジタル化

ここにあるコピーが、
わたしの所有する唯一の脚本です。
当時、
ワープロ執筆した為、
パソコンデータに変換する事が出来ず。
永く段ボールの奥底に、
放置されていた「菊池」の脚本です。
いつかデジタル化しなければと思いつつ、
放置したままでした(面倒ですから)。

このブログを始めて、
10年でも20年でも待っています。
などと言われますと、
本当に申し訳ない気持ちになります。
せめて脚本だけでもと思いまして、
頑張ってデジタル化してみました。

現在の。
わたしの演出フォーマットですと、
この脚本。
48分しかありません。
しかし、当時。
撮影直後の順つなぎ編集で、105分ありました。
そこから様々な事情で切り刻み、
68分という完成尺に至ったのですが。

この脚本で、どう演出したら。
105分もの尺を撮影出来るのか、
昔の自分に尋ねたい気分です。
まったくもって、不思議な脚本です。
台詞は無いに等しく、ト書きばかりで。
大変読むのが辛いと思います。

書いたわたしが戸惑ったくらいですから、
表に出すのをやめようかと迷いました。

ただ。
読み始めはとても辛いのですが、
頑張って5頁程丁寧に読んで頂きますと。
じわじわと、
菊池君の世界観に入り込んで頂けると思います。
興味があれば。
こちらから。

イワモケ

2008-02-14

東京オリンピック

また昭和の。
撮影所育ちの映画監督が、逝ってしまいました。
この「東京オリンピック」は、記録映画ですが。
記録された映像の出来映えは抜群で、
いわゆる記録映画の域を軽く飛び越えています。
76本の市川昆映画。
数えてみましたら、わたしは19本しか観ていません。
76本。
単純計算しても150時間以上です。
不眠不休で観続けても、1週間かかる計算です。
本当に、ものすごい仕事量です。
ちょうど今。
日本映画専門チャンネルで、
市川昆特集を放映しています。
残りの57本、
ぼちぼちと観てみます。

イワモケ

2008-02-13

浮雲

これはもう、
泥沼色恋映画の決定版です。
原作は「放浪記」の林芙美子。
監督は勿論、成瀬巳喜男です。
わたし、成瀬巳喜男という監督。
若い頃はどうも肌が合わず(女々しくて)、敬遠していましたが。
40過ぎに。
まとめて観直す機会がありまして、
認識を改めました。
成瀬巳喜男映画は、
大人の味であります。
成瀬巳喜男と林芙美子とのコンビ。
全部で5本程ありますが、
どれも素晴らしい出来であります。

イワモケ

[追筆]
ゆき子役の高峰秀子さんが書かれた、
傑作エッセイ「わたしの渡世日記」。
女優側から見つめた日本映画史です。
興味があればこちらも是非、
凄く面白いです。

2008-02-12

映写技師と学ラン

名古屋に、今池という街があります、
東京で言うと池袋ですかね、
規模は全然小さいですけど。
その今池にあった名画座。
高校生の頃の話ですから、
劇場の名前はもう忘れてしまいましたが。
通っていた高校が同じ地下鉄のライン上にあり、
定期券を使って途中下車できましたから、
よく通いましたです。

ここはATG映画専門の名画座でして、
客席はいつもガラガラでした。

高校生ですから試験とかあります。
中間とか、期末とか。
この試験週間は絶好の映画週間でもあり、
昼間っから映画を観まくっていました。

そして、この今池ATGで。
大島渚だの、吉田喜重だの。
観るわけです。
普段の夜でもガラガラですから、
平日の昼間なんて、
概ね客はわたしひとりでした。
ですから、
わたしと映写技師のおっちゃんと、
1対1で映画を観るわけです。

ATG映画というのは、
なんだか知らないけど、
絶対どこかでオッパイ出すんです。
こちらは学校帰りですから、学ランですよ。
マズいカンジじゃないですか、
学ランの高校生が昼間っから、
堂々とオッパイ見るというのは。
特に愛知県は教育バカ県ですから、
青少年育成なんとかカントカ、
ですよ。

それで、
画面にオッパイが映ると、
映写室から強い視線を感じるんです。
さりげなく振り向いて映写室を見上げてみると、
やっぱりおっちゃん、
わたしの事を監視するように映写室から見ています。
こちらは間違ってもボッキなどしないように、
平静を装ってオッパイをチラ見します。
おっちゃんはおっちゃんで、
わたしを監視し続けています。
客はわたしひとりですが、
とても緊張感のある上映です。
そんなおっちゃんとの真剣勝負、
なんだか楽しかったなあ。
と、
思い出してみました。

イワモケ

2008-02-08

33年経った今、
改めて観直しても身震してしまう革新的な映像技法です。
アンドレイ・タルコフスキー、
その独自性に改めて驚嘆いたします。
移動撮影とズームレンズの多用。
被写界深度の浅いズームレンズを、
逆利用して自在にフォーカスを送る。
そして、
カメラは移動し続けるのです。
どきどきワクワクです。
モーション・コントロールに頼る現代人、
メーター(露出とフォーカス)が計れない現代人。
だめです、
わたし達はラクをし過ぎていました。
この機会を利用して、
映像の勉強、
やり直しです。

イワモケ
[追筆]
タルコフスキー映画お得意の大風は、
ヘリコプターを使っていたんですね。
さすがソ連映画、
やることがいちいち軍隊式であります。