2012-10-16

酉谷山から秩父鉄道を目指すも挫折

明日は風呂場にカビキラーを撒きたいから、
山にでも行ってちょうだいと嫁に言われましたので。
それではお言葉に甘えまして、
酉谷山(1718m)へ向かうことにします。
10月14日(日)の午前7時25分、
奥多摩駅発東日原行きバスに乗り込み。
終点の東日原に到着したのが、
7時55分。
バス停脇の急坂を30分程登ると、
ニホンザルの生息地らしい所に差し掛かる。

サルはいないかサルはと、
周囲を見回しながら歩くもサルには遭遇できなかった。

地図に記載された時間では一杯水避難所まで2時間30分、
覚悟して登り続けたが。
あっさり1時間30分で、
一杯水避難所に到着。

後半バテないようにと、
ゆっくりじっくり登ったつもりだが。
1時間30分で登れたのはおそらく、
地図の方が間違っているのでしょう。
先程、
私を後ろから追い抜いて行ったトレイルランな彼。
一杯水避難所前のベンチに腰を下ろし、
熱心に地図を見ていたが。
私が到着してベンチに荷物を下ろすと、
立ち上がって蕎麦粒山方向へ向かった。

蕎麦粒山(1472m)を抜けて、
桂谷ノ峰~日向沢ノ峰~曲ヶ谷北峰~川苔山(1363m)というのも1度歩いてみたいものだ。

頭に巻いた日本手拭と首に巻いたタオルをおニュウに取り替え、
さあ先を急ごう。

ここから天目山(1576m)へは、
2ルートあると地図に書かれているが。
1ルートしか見当たらず、
そのまま進んだ。

30分程歩くと天目山(三ツドッケ)こちらの道標があり、
頂上を目指すには一杯水避難所方向へ戻る形で登らなくてはいけないらしい。
仕方なく頂上へと続く脇道へ入り、
急坂を20分程登るとそこは天目山の大パノラマ。
しばらくひとり、
雄大な山容を眺めていたら急にお腹が空いて。
昼食とは別に、
予備で持ってきた蒸しパンを食べる。

ここはいい、
実にいいと。
天目山の大パノラマをひとり占めしていると、
私が登って来た登山道とは真逆の方向から肩で大きく息をしながらおじさんが現れた。

この道はどこからの道ですかと尋ねると、
一杯水避難所の真裏から入る道だと教えてくれた。

そうか、
もうひとつのルートは避難小屋の真裏にあったのかと納得していると。
早速で大変申し訳ないが、
シャターをお願いとカメラを手渡される。

はい撮ります、
123でパシャだ。

昔はこういうの、
かたくなに拒否して嫌ですと断っていたが。
もう断る方が大変面倒なので、
123でパシャだよ。

おじさんに続いてあと2人(男性)、
狭い頂上が混み合ってきたので本線に戻ることにする。

大栗山(1591m)と七跳山(1651m)の山頂がどこにあるのかも分からず、
いつの間にか酉谷避難小屋まで来てしまった。
滝谷ノ峰との分岐を山頂方向へ15分程進むと、
東日原から約4時間で酉谷山に到着。
東日原の標高が620mだから、
1098m登ったことになる。
記念に酉谷山からの山容を撮ろうとカメラを取り出したら、
首から下げていたカメラ用のストラップの紐がプツリと切れた。

これは何か不吉な暗示だろうか、
嫌な予感を抱えつつ。
誰もいない山頂でひとりお昼を食べるていると、
北側から吹く風が大変冷たくて軽い便意を催す。

誰もいないから平気、
その辺で野糞。
というワケにもいかず、
酉谷避難小屋まで戻ってトイレを借りることにする。

急ぎ足ではあるけれど、
下っ腹を刺激せずの早足でもって酉谷避難小屋へちびらず無事到着。
小屋のドアを開けると、
木の匂いがなんとも心地良い。
トイレは小屋を抜けた奥にあって、
和式だが清潔なステンレス製だった。

便を済ませて晴れやかな気分で小屋を出ると、
大きなリュックを背負ったおじさんが立っている。

昨夜は雲取山の避難小屋に泊まったが、
25人がとぐろを巻いて寝るという大変な混雑っぷりだったそうな。
奥多摩へは初めて来たが、
大変気に入ったので連泊して帰ろうと思う。
それで雲取山から滝谷ノ峰を抜けて、
ここまで来たと言う。

気に入ったから避難小屋で連泊か、
ある意味とても贅沢な大人の時間だな。

それではと、
雲取おじさんに別れを告げ。
もう1度、
酉谷山の山頂へ戻ったのが12時30分。
大血川峠を抜けて、
秩父鉄道の白久という駅まで行こうと思う。

ただ、
地図のルートは点線で一部不明瞭とある。
酉谷山山頂には大血川峠への道標はなく、
秩父登高会なる山岳会が付けてくれた黄色いリボンがあるのみだが。
その黄色いリボンや枝に巻かれたビニールテープを信じて、
どんどん下る。

目指す白久という駅は真北にあるワケだから、
目印のない箇所は磁石を頼りに北へ北へと向かえばなんとかなる。

そう思いながら北へ北へと下り続けること30分、
遂に目印のリボンもビニールテープも見当たらなくなってしまった。
戻るにしても下りて来た道はかなりの急坂、
あれをまた登るのかと思うとぞっとする。

よし、
北へ向かって進もう。
北へ向かえばきっとどこかで登山道と合流できる筈だと、
急な崖を駆け下りたのが大ミステーク。

思い返せばあれがターニングポイント、
目印を見失った所で引き返すべきでした。

でまあ、
結局そこからあと30分。
更に急坂を下り続けている途中、
方位磁石に水が入っていることに突然気づいた。

もしかしてこの磁石、
くるくるぱあだったのか。

このまま進めば遭難間違いなしだ、
下りて来たあの崖をよじ登って酉谷山まで戻るしかない。

磁石がくるくるぱあなので、
戻る方角がずれる可能は大いにあるが。
とにかくピーク、
ピークを目指して登り続けてみよう。

崖のような急坂と格闘すること1時間、
目印のビニールテープを遂に発見。

ああ助かった、
これで遭難は免れた。

そこから更に1時間、
必死に登って酉谷山の山頂に戻ることができた。
時刻は15時30分、
東日原からの終バスは18時55分発。
残り時間は3時間55分、
地図の記載時間は4時間15分。
これなら間に合う、
朝来た道をまるっきりの逆戻りなら迷う心配もない。

そうと決まれば、
酉谷避難小屋へもう1度立ち寄って。
頭に巻いた汗まみれの日本手拭と首に巻いたタオルをおニュウに取り替え、
小便して手を洗って下山するぞと。

避難小屋へ立ち寄ってみると、
あの雲取おじさんが山を見ながら美味そうにタバコを吸っていた。

今から下山しますと私が言うと、
なんだ泊まらないのかと寂しそうな雲取おじさん。

確かにこの避難小屋にひとりじゃ、
ちょっと心もとないな。

知らないおじさんと避難小屋で一夜を共にするって、
素敵なのか素敵じゃないのかよくわからないけど。

着替えも食料もないから帰ります、
お互い様でお気をつけて。
今朝の雲取山では見られなかった御来光、
見られるといいですね。

アディオス、
見知らぬ人よ。
奥多摩を気に入ってくれてありがとうで、
お名残惜しくお別れをして。

さてさて大急ぎ、
終バスに乗り遅れたら奥多摩駅まで歩かなきゃだぞ。

てんでこう、
トレイルランよろしくたったかたったか駆け下りて。
1時間30分で一杯水避難小屋に到着、
分からなかった天目山(三ツドッケ)の登山口を確認して。
辺りはもうすぐ真っ暗になりそうだから、
避難小屋でヘッドライトを装着して再出発。
ヘッドライトで登ったことはあるけど、
下るのは初体験です。

やっぱり下りの方がつらいです、
足元がおぼつきません。

途中、
崖を駆け下りる鹿と遭遇したけど。
熊じゃなくて良かったです、
熊じゃなくて。

怖い怖い、
このヘッドライトの電池が切れたらどうなるんだろう。
予備の電池とか持ってないし、
考えれば考えるだけ怖くなる真っ暗闇の山ん中っす。

まだかまだかで、
暗がりを転がるように下りて18時10分。
無事、
東日原のバス停に到着したが。
ちょっと急ぎ過ぎたようです、
終バスまで45分もあります。

当然ながら、
バス停には誰もいない。

バスは本当に来るのだろうか、
バスが来なかったらどうしよう。
電話番号とか書いてないし、
心配だなあと45分待っていたら来ました終バス。

暖房であったかな車内、
やれやれと椅子に座って一安心。

450円でタクシー代わりに使って大変に申し訳ないが、
この終バスがあってホント命拾いした。

このバスがなかったら、
どうなっていたんだろう。

おそらく一杯水避難所から蕎麦粒山を抜けて、
桂谷ノ峰~日向沢ノ峰~曲ヶ谷北峰から青梅線の鳩の巣駅へ下るしかなかっただろう。

計算すると、
一杯水避難所から5時間10分。
鳩の巣駅到着予定時刻は22時10分頃、
ということになるなあ。

結局薬局の登山時間は14時間10分か、
これはかなりキツかっただろうなあ。

カメラのストラップの紐が切れるとか、
急に便意を催すとか。
考えてみけば、
何度も警告が発せられていたワケだ。

神様ってやっぱいるんだなあと、
しみじみ痛感する寒露を過ぎたある秋の日曜日でした。

迷ったら すぐ引き返せ 山の人

イワモケ

[登山時間=約10時間10分]