彼にはじめて会ったのは2001年の夏でしたから、
あれからもう9年になりますか。
わたしが1年だけ住んだ山口県のトある島に、
父であるプロデューサーE氏に連れられて、
遙々東京から遊びにやって来たのでした。
あのちっちゃいのが、
いつのまにか中3です。
その中3が先日、
彼女と高尾山に行きまして、
山歩きの楽しさに目覚めたそうです。
中3の下に中1と小5の弟が2人いまして、
今回E氏の依頼を受け、
兄弟3人と彼女ひとりを引き連れまして、
秋の奥多摩を満喫してもらうべく、
観光ガイド役を勤めさせて頂くことになりました、
山モケと申します、
どうぞよろしく。
E氏とは昔、
調布から新潟は糸魚川までのバカチャリ旅行をしましたが、
最近は膝の状態が芳しくないので、
山を登るのは無理だということです。
当初はバスとケーブルカーで御獄山まで行き、
子どもたちだけを引き連れて、
日の出山でも往復しようかと思いましたが、
これじゃあどうにも面白くないから、
終点の奥多摩駅まで行き、
奥多摩湖を目指して、
割合平坦な「奥多摩むかしみち」を歩くことにしました。
とは言え、
全部歩きますと4時間はかかるコースなので、
短縮版の2時間コースを楽しむことにします。
さて、
当日の日曜日。
昨晩ディナーでいただいた、
インドレストランのカレーがいけなかったのか、
早朝から嫁が下痢と嘔吐です。
わたしも一緒に食べましたが、
こちらは別段問題ありません。
なんなんでしょう?
原因不明ですが、
うちで養生しててもらうしかありません。
というわけで嫁を置き去りにして、
わたしが住む最寄り駅でもってE氏御一行様と合流しまして、
乗って来た車は田舎値段の駐車場に入れ、
出発です。
E氏に教えられた、
「イワモケ」という響きが面白いらしく、
「イワモケ、イワモケ」と、
子供たちに連呼されながら電車に乗りまして、
奥多摩に向かいました。
青梅駅から奥多摩駅まで、
ドアの開閉は押しボタン式です。
東京23区から来た子供たちには当然それが珍しく、
興味津々の様子でした。
E氏のうんこ待ちやらなんやらで、
奥多摩駅に到着したのが、
お昼近くになってしまいましたから、
駅前で軽食と飲料水とを各自購入しまして、
12時25分発のすし詰め状態のバスに乗り込み、
15分程で境橋というバス停に到着して、
途中下車しました。
バスを降りた橋の下には、
絵に描いたような渓谷が広がっています。
子どもたちは「すごいすごい」と大喜びしながら、
各自のデジカメで撮影大会です。
実はわたし、
「奥多摩むかしみち」は初体験で、
山と高原地図と現地の道しるべが頼りです。
まずは白髭神社を目指して歩くはずなのですが、
「白髭神社こちら」的な道しるべがなにもなく、
しかたなく全長359メートルの白髭トンネルを抜けて、
「むかしみち」に入ることにしました。
帰ってから調べてわかりましたが、
白髭トンネル脇の道をのぼれば「むかしみち」に合流でき、
白髭神社に立ち寄ることも出来たようです。
まあ、
なにはともあれ、
無事「むかしみち」に入ることが出来ましたので、
あとは道しるべ通り歩き続けるだけです。
この「むかしみち」というのは、
新しい青梅街道ができたために、
すっかり交通がとだえた旧青梅街道のことです。
江戸と甲州とをむすぶ道で、
甲州街道に対して、
甲州裏街道とも言われていたそうです。
紅葉した山々を見ながら歩き出しますと、
子どもたちから、
「イワモケ、歩くのはや過ぎ」
というクレームです。
やっぱり子どものペースじゃあ、
2時間は無理だなとあきらめて、
少し歩いては振り向いて待つ作戦に変更します。
ひとり山歩きばかりやっていますと、
どんどんペースが早くなりますから、
たまにはこんなのんびりペースも良いものです。
惣岳渓谷の深い谷に渡されている、
しだくら橋と言う吊り橋を恐る恐る渡ります。
確かに「5人以上禁止」ということだけあって、
揺れ方がリアルに恐ろしいのですが、
子どもたちは飛んだり跳ねたりの大はしゃぎでした。
吊り橋を渡ったところでレジャーシートを広げて、
軽食タイムです。
歩いていると汗ばむくらいの陽気ですが、
座り込むと急に寒くなります。
あまり長く休んでいると風邪を引きそうなので、
出発します。
縁結びの地蔵尊とか、
馬の水のみ場とか、
むし歯地蔵尊とか、
各所に説明看板があり、
それを毎回小5くんが大声で読みます。
読めない漢字は適当に読むから意味不明ですけどね。
国道411号の中山トンネル脇から、
舗装された道路が山道にかわりました。
1時間以上歩き続けた後の山道、
E氏を気づかいながらゆっくりと登り続けますと、
中山集落です。
中1くん、
昨日スクワットを100回やったせいで、
太股が痛くて、
E氏が持参した登山用の杖を手放しません。
小5も中3もその彼女もペースがどんどん落ちて、
「イワモケ、あと何分?」を連発しています。
山道と格闘すること約30分、
奥多摩湖を一望できる場所に、
青目不動堂という休憩場があり、
食事もできるようなので、
ここで遅い昼食をいただくことにしました。
うどんはあとひと玉、
そばはあと5玉、
白米のおにぎりはあとふたつ。
焼き餅は割とあるそうです。
とにかくあるものを全部注文しまして、
大人たちは、
とりあえずビールで乾杯です。
まあ、
小一時間休憩して、
あたりもすっかり薄ぼんやりしてきましたから、
最後の力を振り絞って下山です。
坂を下りきると国道に出て、
西東京バスの水根バス停に着きました。
タイミング良く時刻表にない臨時バスがやって来て、
それに乗り込んだら、
すいすい15分程で奥多摩駅到着です。
奥多摩駅の公衆トイレで小便などをして、
発車まであと3分の電車に乗り込んだ、
までは良かったけれど、
3兄弟が例の開閉ボタンで遊びだして、
ホームに中3と小5とを置き去りにして、
静かに電車が走り出してしまった。
結局、
次の白丸駅で降りて、
待つこと20分。
やっと合流して、
全員電車で爆睡してたら、
あっという間に青梅駅。
青梅からふた駅、
朝乗ったわたしの最寄り駅で降りて、
駅前にある温泉にたち寄って、
温泉内にある食事処で夕食をいただいて解散です。
駐車場でお見送りをして、
家に戻ったらもうぐったり。
嫁の健康状態も回復したようで、
安心して爆睡しました。
イワモケ
E氏のビールは、
サウナですっかりぬけましたので、
飲酒運転ではありません。
あしからず。
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