2013-04-11

三ツドッケ、軍畑から登ったった

4月9日火曜日、
快晴。
約2ヶ月ぶりの山行、
今日は軍畑から三ツドッケ(1576m)を目指してみます。

東日原BSから三ツドッケ(天目山)に登って、
高水山まで縦走するのが正統派のようですが。
今日はあえて、
逆から挑んでみたいと思います。
午前7時35分、
軍畑駅を出発して30分弱で高水山登山口に到着。
何度も登り慣れている登山道だが、
今日は身体が重い。
2ヶ月山を休んだ影響だろうか、
後半バテないようにペースダウンして慎重に登る。

登山口から50分弱、
常福院のトイレを借りて小用を済ませる。

4時間程度しか寝ていない影響か、
どうにも身体が重くて仕方がない。
とりあえず岩茸石山(793m)の絶景を見て、
元気を出そうとすたこら登ってみたが。
春霞と黄砂の影響で、
見通しが全くよろしくない。
絶景がNGならパンでも食って元気を出そうと、
ランチパックのたまご味をぱくつく。

よくよく考えてみたら今日のコース、
高水山(759m)岩茸石山(793m)黒山(842m)棒ノ折山(969m)とじわじわ登り~の。
槙ノ尾山(945m)長尾ノ丸(958m)日向沢ノ峰(1356m)蕎麦粒山(1472m)で、
ぐんぐん標高を稼ぐ。
そんでもって仙元峠(1444m)で一旦下がって、
三ツドッケ(1576m)でピークに達する。

これを細かく計算してみると、
コース全体の約75%が登りということになる。
この身体の重さを考慮すると、
途中でコース変更もありうる話。

東日原BS発の終バスが18時52分だから、
日向沢ノ峰に15時だ。
15時までに到着できなかったら、
川苔山方向にコース変更して鳩ノ巣駅を目指そう。
そうだそうしようとB案も用意して、
岩茸石山から棒ノ折山を目指して出発したのが9時15分。

10時間を超えるコースのペース配分が、
いまいちよくわかっていない気がするが。
1に経験2に経験、
とにかく場数を踏むしかない。

権次入峠から棒ノ折山へと続く広い坂が整備工事のため、
脇の迂回路を使って山頂まで登るが。
棒ノ折山も春霞と黄砂の影響で、
見通しがよろしくない。
冬の絶景がつくづく恋しい、
これから秋まで低山からの絶景は拝めそうにないな。

問題はここから三ツドッケまでの未経験コース、
登山道は急に細々と怪しくなったが。
権次入峠の迂回路からずっと木に括り付けてあるピンク色の目印、
これのお陰で道に迷うこともなさそうだ。
今日は平日だからさすがに団体さんはいないが、
朝から数人の男性ひとり登山客と挨拶を交わした。

そしてこの未経験コースに入ってからはなぜか、
女性ひとり登山客ばかりと挨拶を交わす。

女性と言ってもギャルではなく、
初老のおばさん達なのだが。
しかし元気でびっくり、
この調子だとこのおばさん達が百歳になられる頃には。
百歳人口が現在の10倍とか、
あながちない話じゃないかも知れない。

槙ノ尾山を超えた辺りから、
随所に出現する急登。
多少の平地と下りはあるにせよ、
基本的には朝からずっと登りを続けているワケで。
その蓄積疲労がじわじわボディーブローよろしく、
ダメージを蓄え続けている。

長尾ノ丸の先にある更なる急登に差し掛かると、
苦労しながら下りて来る初老の夫婦と遭遇。

休憩かたがた、
その場に立ち尽くして待っていると。
「どうもすみません」と婦人が恐縮するので、
「この先もすごいいんですか?」と質問してみた。

すると婦人は関西訛りの残るイントネーションで、
「この先に、これの4倍はあろう坂がある」と教えてくれた。

「もう千メートルは越えましたかねぇ?」と、
今度はご主人に質問してみると。
ご主人もやはり関西訛りの残るイントネーションで、
「ここいらはまだ900メートル台でしょう」とおっしゃる。

いくつもの急登を越えて、
かなり高度を稼いだつもりだったのだが。
まだ千メートルを越えていないとは、
一体全体どういうことだろう。

千メートル弱の低山をひとつ登るのと、
その低山をいくつも越えて行くのとでは全く意味が違う。
これはまだまだ気が抜けぬ、
心して登るべしと気合を入れ直す。

別れ際、
「でも、若いから平気よね」と婦人に励まされ。
「まあ、頑張って登ってみます」と会釈して、
目の前の急登に挑み始めた。

「若くはないです、50過ぎてます」と、
ひとりツッコミしながら登っていると後ろから。
「若いから平気よね?」と、
今度は不安そうな声色でご主人に尋ねる婦人の声が聞こえる。

尋ねられたご主人は返答に困り、
何も答えず受け流していたようだが。
恐ろしい、
この先に待っているであろう4倍の急登はそんなに凄いのか。

身体のバッテリー残量はおそらく50%、
とりあえず日向沢ノ峰まで頑張ってみよう。

次々と出現する急登をなんとか越えたその後、
日向沢ノ峰のピークへと続くらしい噂の4倍急登が出現した。

10歩登っては休み、
10歩登っては休みを繰り返し。
エベレスト登山のような牛歩でもって、
なんとか日向沢ノ峰に到着。
携帯の時計を見てみると、
14時05分。
軍畑を出発してから6時間30分か、
さてどうしたものか。
ここから川苔山方向へショートカットしようか、
終バスに間に合いそうだから予定通り三ツドッケを目指すか。

棒ノ折山を出発したあたりから、
なんだか胃が痛くて気持ちも悪い。

当然食欲もないが、
薬だと思って蒸しパンをひとつ食べてみたら。
少し元気が出て、
予定通り三ツドッケを目指すことにした。

もうひと踏ん張り、
まずは蕎麦粒山を目指して歩き出そう。

ピンクが途中から、
赤や黄色の目印に変わったが。
ありがたい目印のお陰で、
心許無い登山道も道に迷う心配はない。

ただ残念なのは、
登山道の北側も南側も木々が邪魔をして眺望がよろしくない点だ。

道中のイベントといえば、
かなりの頻度で出現する急登をどう攻略するか。
それ以外特に変化のないコースで、
日向沢ノ峰を過ぎてからはもう誰ひとりとも遭遇していない。

そしておそらくこのコース最大のイベントであろう、
蕎麦粒山へと続く長い急登が立ちはだかる。
その天敵を見上げ、
水分補給をしながら心の整理をしていると。
10年以上昔、
東京・調布から新潟・糸魚川までママチャリで走破した時の記憶が甦った。

あの塩尻峠越えはキツかった、
あれに比べればこんなの屁の河童だ。

と自分に言い聞かせ、
牛歩作戦でもって一歩一歩確実に登って行く。

俺は何をやってるんだ、
ママチャリで糸魚川まで走ったって。
キャバクラでモテたりしなかったじゃないか、
意味がわからないと鼻で笑われただけだったじゃないか。

美味しい魚が食べたいから釣りをする、
美味しい野菜が食べたいから土をいじる。
意味のあることしかしない大人なんて糞食らえだ、
だから俺はひとり密かに意味のないバカ登山をする。

万歳バカ登山、
万歳バカ野郎。

などなどと、
朝から蓄積され続けた疲労に頭も侵され幻聴が聞こえ出す。

両耳にへばりつく幻聴を振り払い、
頭を上げると蕎麦粒山の道標が見えた。
素人さんならここで嬉しくなって、
一気に登りがちだが。
あえてここで、
一休みすべきだ。
なぜならば、
山の傾斜が最もキツいのは頂上付近なのだから。

山と高原地図によると、
一杯水避難小屋までは残り80分だそうだ。
自分歩速は八掛けだから、
64分以内に着けるだろう。

蕎麦粒山の山頂に横たわるベッドのような大きな石、
荷物を下ろして横になってみた。

背中の筋肉が悲鳴を上げている、
背骨もコキコキ鳴る。

横たわったまま、
青い空をぼんやり見上げるが。
言葉は何も浮かんでこない、
ただそこに青い空があるばかりだ。

さあ、
三ツドッケの絶景を見て締め括ろう。

岩茸石山も棒ノ折山も、
春霞と黄砂の影響でよろしくなかったけど。
標高1576mの三ツドッケならきっと大丈夫と、
自分に言い聞かせて出発したのが14時10分。
そして仙元峠を越え、
一杯水避難小屋に到着したのが15時05分。
軍畑から三ツドッケまで逆歩きするのはバカ登山の極みだな、
もう2度とごめんだと今は思ってるけど。
2、3年経てばまた登りたくなるのだろうよ、
そこがバカ登山の心粋だぜぃ。

一杯水避難小屋の裏手から、
20分程かけて最後の急登を越えて山頂に到着。
三ツドッケは2度目だが、
ここの360度大パノラマは超絶景だ。
前回は見えなっかた富士山も、
今日はぼんやり見えている。
このまま夕暮の富士山を眺めて、
酉谷山の避難小屋にでも泊まろうか。
一杯水のトイレは古くて汚いが、
酉谷避難小屋はとても清潔だ。
この小屋なら泊まれそうだと、
酉谷山に登った時に思った。

そろそろ避難小屋デビューしてみたいものだが、
なかなか踏ん切りがつかないでいる。
すべての問題は、
洗髪しないと眠れないという潔癖体質にある。
水の要らないシャンプーみたいな、
画期的な薬品はないものか。

身体のバッテリー残量はおそらく15%、
終バスを乗り過ごして奥多摩駅まで歩く気力はもうない。

現在時刻は16時15分、
ここからゆっくり下りても120分以内で東日原BSに着くだろう。
東日原に着いたらすかっとさわやかなコカコーラを飲もうか、
それとも思い切ってビールとか。
確かバス停の近くに酒屋があったぞ、
ビールもありか。
18時前後に着くだろうワケだから、
18時52分の終バスまで1時間近くある。
ビールだビール、
ビールを飲めばきっとこの胃の痛みも消えるだろう。

頭の中が冷えたビールで占拠され、
ビールビールと囁きながら。
すたこらさっさと、
東日原を目指して下り続けるが。
登りより下りの方がラクというのは大間違いで、
下りの傾斜が足先に強い痛みを走らせる。

三ツドッケから高水山への正統派コースも、
あながち楽勝じゃないかも知れないぞ。
この逆なのだから、
コース全体の約75%が下りということになる。
それはそれで、
大変骨の折れることだろう。

足先に走る強い痛みに耐え続けて、
東日原BSに到着したのが18時05分。

バス停に隣接されたトイレで小用を済ませ、
酒屋に向かってみたが店は閉まっていた。

幸い店先にSAPPOROの自販機があったので、
ビールを買おうとしばらく眺めてみたが。
非アルコールの飲料水ばかりで、
ビールはない。

自販機でビールを提供できない時代が、
この田舎にも押し寄せてしまったのか。

SAPPOROの横にコカコーラの自販機もあったのだが、
なぜか無性にSAPPORO富士山麓バナジウム・ウォーターが飲みたくなって買った。

富士山麓の美味しい水で、
痛む胃を洗浄しなからバスを待つ。

ベンチに座ったままうとうとしていると、
意外に早く時間が過ぎてくれて終バスが現れる。

ひとりバスに乗り込み、
本格的に眠ることにする。

バスに揺られること30分弱、
「次は終点の奥多摩駅」というアナウンスで目が覚める。
いつの間にか乗り込んでいた3人のおやじ達が、
大きな声で喋っている。
「今週は長えなぁ、まだ火曜かよ」と、
恐ろしく長い1週間を憂いていた。

3人は登山客ではなく、
地元の人間らしかった。

奥多摩駅にバスが到着したので立ち上がると、
「お先にどうぞ」と3人組の最年長者に先を譲られ、
「すみません」と会釈してバスを下りる。

平日の山行は少々後ろ暗いが、
山の静かさは至極この上ない。
山あれば 意味なくひたすら バカ登る

イワモケ

JR青梅線・軍畑駅→高源寺→高水山(759m)→岩茸石山(793m)→黒山(842m)→権次入峠→棒ノ折山(969m)→槙ノ尾山(945m)→長尾ノ丸(958m)→日向沢ノ峰(1356m)→蕎麦粒山(1472m)→仙元峠(1444m)→一杯水避難小屋→三ツドッケ(1576m)→一杯水避難小屋→東日原BS→バス→JR青梅線・奥多摩駅
距離=26.7km 最大標高差=1356m
[登山時間=約10時間30分]

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